遺伝情報に基づいた個別化治療の開発

 てんかんにおける責任遺伝子の網羅的探索


1.高密度DNAマイクロアレイを用いたてんかん原因遺伝子変異ゲノム全域スクリーニング

 メンデルの法則に従う単一遺伝子が関与する特発性てんかんの責任遺伝子同定に成功してきた従来の連鎖解析などの遺伝子解析手段では複数の遺伝子や疾患感受性遺伝子の関与が推定される残された多くのてんかん(症候性てんかんを含む)の遺伝子解析は困難である。そのため弘前大学・福岡大学・理化学研究所を中心としたグループでは、全ゲノムCNV(Copy Number Variation)解析/連関(association)解析を行い、候補染色体領域を同定し領域内に存在する候補遺伝子についてDHPLC(Denaturing High Performance Liquid Chromatography)解析、direct sequenceなどによる変位解析を施行し、てんかんの新規責任・感受性遺伝子の同定を行う。
 対象症例は全般てんかん及び熱性けいれん(juvenile myoclonic epilepsy, childhood absence epilepsy, juvenile absence epilepsy, GTC on awakening, epilepsy with myoclonic absences, benign neonatal convulsions, generalized epilepsy with febrile seizures, West syndrome, など)、部分てんかん(frontal lobe epilepsy, temporal lobe epilepsy, など)とする。解析はSNPsタイピング用高密度DNAマイクロアレイを用いて、ゲノム全域で網羅的にスクリーニングするが、50万以上のSNPsタイピングデータとともに数キロベース単位での詳細なDNA構造異常データも収得する。構造異常データは我々が開発した新たな手法(DNA microarrayとPCRで染色体の欠損部位を正確に決め、欠損部位に存在する遺伝子を同定:BBRC, 2006)を用いて解析する。従来の手法で変異を見いだせなかった症例に対してsemi-quantitative PCR法(multiplex ligation-dependent probe amplification: MLPA)も採用し、再解析する。家系によっては連鎖解析、direct sequenceなどの解析を併用する。
ヒトゲノムのコピー数多型解析を高密度DNAマイクロアレイデータを用いて行うため、独自アルゴリズムによるゲノム変異部位解析システム(理研ゲノムセンター情報基盤チームと共同で開発)VarSearch(図1)を用いる。VarSearchは大規模データベースとグラフィックユーザーインターフェースを備えており、数十億のスポットを同時に比較するることでゲノム上の変異候補を解析可能である。



       図1.VarSearchで同定された19番染色体のコピー数多型



2.次世代シーケンサーを用いたてんかん原因遺伝子変異ゲノム全域スクリーニング

本研究グループの有する豊富なてんかん症例に対してゲノム全域を対象とした疾患原因遺伝子変異のスクリーニングを行う。次世代シーケンサーを用いたスクリーニングでは、特に遺伝背景が強いと考えられる症例に対して、特定領域ゲノム濃縮法と次世代シーケンサーを組み合わせて解析する。